こんにちは、みのむしチャンネルにようこそ。
今回は、「企業における不動産売却について(後編)」を投稿させていただきます。
前編を読んでからの方が理解しやすいと思います。まだ読まれていない方はこちらからどうぞ→
前編では【自社工場を土地・建物(居抜き)で売却する場合】というケーススタディを設定して、“リスクの洗い出し”までを解説してきました。本投稿はその続きとなります。
いよいよ売却に向けて本格的な活動に入ります。売却活動には色々と心を砕かないといけない要素が多くあります。
売却活動の肝
自社工場の土地・建物はいくらで売却するのが良いのか?これは非常に難しい問題です。
戸建て住宅やマンションを売却する時は、取引件数が多いのでネットでググっただけでもそれなりの金額がわかりますよね。しかし工場の様な大きな物件はググってもヒットしません。取引件数が極端に少ないため相場がわからないのです。取引件数が非常に少ない案件においては、売却先の決定方法や売価が問題視されない様にしないといけません。
つまり「取引の透明性」と「価格の妥当性」が問われるわけです。売却先と売買価格を決めたけど、「どうやって売却相手を決めたの?」「その価格は妥当なの?」「もっと高く買ってくれる相手が居るんじゃないの?」など、自社の経理部門からはヤイヤイ言われる可能性大です。
不動産会社から「価格意見書」を取得するという方法もありますが、一番透明性・妥当性が高いのはやはり入札だと思います。大きな取引なので引き合いが複数あるとは限りませんが、最初はやはり入札を目指すべきだと思います。
「入札して決めました」というのが一番美しく、説明しやすいプロセスです。結果的に入札に至らなかったとしてもまずは入札を目指すのが良いでしょう。
経理部門が会計監査等で公認会計士からの質問に耐えられる材料を準備してあげましょう。繰り返しますが「取引の透明性」「価格の妥当性」が重要です。これらが担保出来るように常に意識して売却活動を進めていきましょう。
大工程の立案
リスク条件によって工程が大きく変わります。一番のリスクは地下水汚染が発見されて浄化が必要なケースだと思います。土壌地下水対策工事の後、2年間の地下水モニタリング期間が必要で最終のモニタリング結果が問題なしとなった時点で初めて行政の「区域指定解除」という結果が得られます。
個々の工程の遅延等も予測しつつ、目標とする決済日から逆算して余裕を持った大工程を立案します
私の経験では工程表作成にあたり主に注意する点は以下の通りです。
①マイルストーンを決めて工程表に書き込んでおく②ネットワーク工程表を作成する(“Bというタスクを行うためにタスクAが必要条件になる”など各タスク間の条件が可視化出来ます)③社内稟議のスケジュールは早めに押さえて記載する(社外の調整に忙殺されて意外と忘れがちです)
売却活動は自社の努力だけでは解決できない事も多いです。特に対行政に関するイベントは余裕を持ったスケジュールとし、進捗の管理もこまめに行いましょう。
進捗管理(予期せぬこと事が起こります)
隣地の住人が境界確定に協力してくれない。土壌汚染が思いのほか広がっていて調査期間が延びた。土壌改良をしていたら地中から建設ゴミが出てきた。居ぬきで引き渡す建物の鍵一覧が無い。地域住民から解体工事に関するクレームが入った。図面にはない建物杭が地中から出てきた。建物外壁塗装から石綿が発見された。などなど、私が数件携わった売却案件だけでも様々な事が起こりました。
都度対応するしかありませんが近隣対応と行政対応は特に慎重に行いましょう。
また、年度をまたぐ売却の際には経理部門との調整もきめ細かくやっておく必要があります。なぜなら経営状況によっては当初の売却計画がSTOPとなる可能性もあるからです。少なくとも年1回、年間決済の時期には経理部門に確認を入れておいた方が無難です。
現場仕事に予定外のトラブルはつきものです。いちいち自分の感情を乗せていると疲れるので時に『心を氷』のようにして突き進みましょう。また、一人で抱え込まないようにすることが大切です。
まとめ
最近のニュースの中で「〇〇会社が首都圏の自社ビルを売却」等のニュースを目にするケースが増えました。
コロナの影響で勤務形態の変化が加速したこともありますが、企業には固定資産の割合を減らして財務体質の強化を図りたい狙いがあるのしょう。普段決算や会計などは経理の仕事と考えているかも知れませんが、どの様な業務を行っていてもお金の動きや会計処理は必ず付きまとってくるものです。会社でのスキルアップや自分の資産形成の勉強を込めて、会計(簿記)に関する知識を付けていくとこれからの人生に役立つかもしれませんね。
不動産売却はなるべくその拠点に想い入れのある人が行うのが良いのだと思います。人間を最後看取るのと一緒で『想い入れ』や『愛』が必要だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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